デイキャンプではアルコールストーブを使うことが多いねこきんぐです。いつもはエスビットの真鍮製のアルストと今回紹介するバーゴのチタンアルストのT307の2つを状況によって使い分けています。
このチタンアルストのT307(カタログ名称は「チタニウムコンバーターストーブ」ですが、長いのでチタンアルストにします)なのですが、世間では本燃焼までに時間が掛かるとかで扱いずらいヤツと思われていてちょっと敬遠している方も多いようです。
実はこのアルスト、使いようによってはとてもユースフルな製品なのですよ。私、ねこきんぐがこれをどのように愛用しているかを今回は紹介したいと思います。
バーゴ チタニウム製アルコールストーブT307 の基本情報
- 大きさ:径61㎜ 高さ22mm 重量39g
- 容量 :燃料タンク容量 44ml (HPでのカタログ値)
- 燃焼時間: 約20分(同様にHPにある数字)
- 価格:Amazon にて4500円程
- 本体から「固定足」が出ているT305という製品もあるが性能は同じ
- バーゴ代理店のケンコー社のHPはこちら
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T307は軽量・コンパクトなチタニウム製のアルコールストーブ。同社のヘキサゴンウッドストーブに組み合わせて使用することを前提とされて作られている。燃料タンク容量は公称44㏄とあるが、44㏄入れてみると燃料がなみなみ溢れんばかりとなる。
チタニウム製の為筐体が温まりにくく、燃料投入が少ないと本燃焼までの時間が掛かるので使いずらいという意見が散見される(そこはプレヒートすればよいのだが)
付属の3つ足スタンドもチタニウム製で、同社のヘキサゴンウッドストーブに組み込む際の台座になるのだが、単独使用で五徳代わりにもなる。
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ねこきんぐが考察するT307のよろしくない点と優れている点
よろしくない点から
・高火力や長時間の燃焼は期待できない
コンパクトゆえの特性でもあるので、ここは割り切るしかない。カタログ上では「燃料が44㏄投入出来てで20分間燃焼する」「500mlの水を5,6分で沸かす」とあるが、実験した結果では、冬場の屋内(10度前後)の条件下で沸騰するまで約15分、また燃焼時間は25分であった。この実力の範囲内で使うことを要求される。
・燃料投入口が小さい
上部中央にある燃料を入れるところが小さい(径15㎜)ので、乱暴に燃料を注ぐと周囲にアルコール燃料を飛散させてしまうので、燃料の注入には慎重さが必要。
・燃料投入が少ないと本燃焼までに時間がかかる
チタニウム製の為筐体が温まりにくいことから、本燃焼に移行するまでにやたら時間が掛かる。燃料の投入量が少ない(すり鉢部まで燃料が入っていない)場合にこの現象は顕著にみられる。しかしながらこの事象についてはプレヒートを実施すれば簡単に解消される。
プレヒートとは:本燃焼前に筐体を外側から強制的に加熱することを言う。具体的にはT307に着火後、アルコール燃料を数滴加えた小さな皿(塗料皿とかビール瓶の蓋など)に火をつけてT307を数秒間、下から加熱する。これによりT307の筐体の温度上昇が促進され、瞬時に本燃焼状態となる。
・ちょっとお高い
アマゾンでも4500円程する。機能だけ考えればダイソーの300円のアルストとそんなに変わらない。別にアルスト使えればダイソーでいいじゃん、という人には不向き。
優れている点
・パームサイズで適度な小型・軽量であること(径61㎜、高さ22㎜ 重量39g)
小型でありながら使いやすい大きさと重さで、シンプルですっきりした形状である。エスビットやトランギアのアルストに比べるととても小さく感じられる。アルストの実力としては1回の燃料投入で500mlの水を沸騰させる火力を持つので及第点である。
・ヘキサゴンウッドストーブにジャストフィット
専用設計品なのでヘキサゴンウッドストーブにジャストフィットする。固定部も安定しており取り扱いも良い。また、筐体を裏返すと固形燃料を乗せることが出来るらしい。(但しそんな使い方をするuserが存在するのか大いに疑問だが)
・加熱部が青紫色に変色するのがいい感じ
チタニウム製なので加熱されたところがきれいな青紫色に変色する。この変色した使いこんでる感がまたいい感じである。手に持つと手触りもなめらかで見栄えもよい。チタン製のため強度にも優れている。机上に置いて眺めていても楽しい。所有欲を満足するツールである。
・メスティンを用いた自動炊飯に最適
実は固形燃料での自動炊飯と同様に、このアルストでメスティンのほったらかし炊飯ができる。アルストがあるのに自動炊飯のためだけにわざわざ固形燃料を用意したり、高火力炊飯での「炊き具合の様子をいちいち監視する」みたいな不便さも必要がない。
詳細については、別記事「アルストを使った失敗しないメスティンで自動炊飯を紹介するよ」を参照ください。
燃焼実験してみた
その1 公称44㏄の容量と20分間の燃焼時間を検証する
カタログ値にある、「44㏄の容量があり、約20分燃焼する」「500mlの水を5,6分で沸騰させる」について検証してみた。五徳・風防は当然、ヘキサゴンウッドストーブと組み合わせる。
条件は、1月の関東の冬場の室内(気温:12度ほど、水温も同程度の水道水を用いた。屋内なので無風状態)燃料は市販のオクダ燃料用アルコール。
まず燃料を44㏄入れてみる。燃料投入口から更にすり鉢の中央付近まで燃料が上がってきている(写真矢印のところ)。これは溢れそうですな。これでは持ち運びとかは出来無いのアルストをセッテイングしてから燃料を投入するのが良さそう。
500㏄の水を入れたケトルを沸かしてみる。バーゴ製品取扱代理店のケンコーのホームページでは、同等品のT305が「500mlの水が5.6分で沸騰する」とあるので、これを検証してみる。今回の沸騰の判定は、野外でもザックリ沸騰の目安とされる「ぼこぼこと大きめの泡が出たところ」としてみる。なおプレヒートについてはホームページに記載がないので今回は実施しない。
点火直後の様子はこちら。
投入した燃料の表面に火が付いているだけの状態。上部のすり鉢全体を加熱しているのでセルフプレヒート状態。1分30秒で本燃焼(アルスト全体が温められて周囲の小さな穴から炎が噴き出してくる)に入った。500mlの水道水が入ったケトルを置き、この時点から沸騰までの時間を測定する。
6分後、うっすらと湯気が出てくる。10分後、ぽつぽつと小さいな泡が出てきたが未だ沸騰とはいえない。15分でやっとぐつぐつと大きな泡が出てきた。ここを沸騰とする。
沸騰までの時間は15分であった。条件にもよるだろうがさすがに5.6分では沸騰しないと感じる。そのまま燃焼が終了するまで保つ。完全消火した時間は、25分後であった。
結果:44㏄燃料で500mlの水を15分で沸騰させることが出来た。連続使用時間は25分であった。
考察:カップラーメン一人分のお湯(500mlと仮定)を湯沸かしする能力は保有しているのでアルストとしては及第点。今回は沸騰まで15分かかったが冬場の条件下であったため、夏場のもっと気温が高く水温も高い条件であればもう少し早いと想像される。
その2 2人分のお茶用のお湯(300ml)を沸かしてみる
2人分のお湯(300ml)が必要と想定して、20㏄の燃料で300mlの水を沸騰させてみる。今回は「プレヒート有り」で行う。環境条件は(その1)と同じく冬場の気温12度の屋内、水温も気温と同程度の水道水を用いる。燃料も同じ。
まずは20㏄の燃料を入れた状態がこちらの写真。44㏄投入と比較すると、すり鉢部分まで燃料が上がっていない。穴(燃料投入口)の高さの中央くらいの水位ですね(写真矢印の部位)
点火するとこんな感じ。中央部に青い炎がみえる。このままでは火力が小さいので、アルストとしては使えない。本燃焼をさせる必要がある。
このアルストT307は筐体がチタン製のため熱の伝わりが悪い(銅とくらべると1/23程)。更に点火しているのは中央部だけなのでアルスト全体を加熱しずらい。そのため本燃焼(アルスト全体が温められて周囲の小さな穴から炎が噴き出してくる)になるまでに時間が掛かる。そこでプレヒートを行ってみる。今回はアルミ皿に燃料を数滴たらしたものに火をつけて、T307の下部へ置いてみる。
すると、瞬時に本燃焼に移行した。
ここでスノピの450mlマグカップに300mlの水道水を入れて火にかけてみる。同様に沸騰までの時間と鎮火までの時間を測定してみる。
4分30秒後、ぽつぽつと小さいな泡が出てきた。10分でやっとぐつぐつと大きな泡が出てきたので沸騰とする。沸騰までの時間は10分であった。そのまま燃焼が終了するまで保つと、完全鎮火までに要した時間は11分であった。
結果:プレヒートすれば、瞬時に本燃焼へ移行する。200㏄あれば冬場でも300mlのお湯を沸騰させることが出来る。
考察:今回は屋内(無風状態)での実験だったが屋外の場合は風の影響も考慮する必要もある。沸騰するまでの時間と燃焼終了時間にあまり時間差が無かったことから屋外使用時は燃料投入量をもう少し増量(25㏄くらいか)するのが安心と思える。
ねこきんぐのT307の使い方を2つ紹介します
単独活動の時はヘキサゴンウッドストーブと組み合わせてお湯を沸かす
1人分のお茶を入れるために湯を沸かしたい、という時はヘキサゴンウッドストーブにT307を組み合わせて、まったりとお湯が沸くのを待つのがねこきんぐ流だ。この時なるべく日陰にセッティングする。日差しがあるところではアルストの青い炎が見えないからだ。
プレヒートは実施する。ねこきんぐはアルミ皿にアルコール燃料を数滴たらしてT307の下に置いてから火をつけている。こうすれば全くストレス無くT307を扱うことができる。是非、お試しください。
一人でお茶だけするだけのチェアリングなどであればT307これ一つ持ち歩けば事たりる。軽量コンパクトでかさばりませんしね。もし2人分以上のお湯が必要な場合は、わざわざT307を選ばずに素直にエスビットのアルストを使いますよ。
メスティンで自動炊飯する
T307はメスティンでの自動炊飯にとても相性がいいことが知られている。固形燃料で行うほったらかし炊飯が、このアルストで簡単に実現出来る。
失敗しないポイントが2つある。ひとつは完全防風して熱を逃がさない事である。ヘキサゴンウッドストーブでは完全防風出来ないので使わないほうが好ましい。付属の3本足スタンドを五徳としてアルミの風防でぐるりと全体を防風する。
失敗しないポイントの2つ目は、米1合で燃料は30cc投入することだ。これさえ守れば固形燃料でのほったらかし炊飯と同じ要領でおいしいご飯が炊くことが出来る。是非、お試しください。詳細記事が別記事「アルストを使った失敗しないメスティンでの自動炊飯方法を紹介します(バーゴのチタンアルストT307を使う方法)」にありますので、興味のある方はこちらも合わせて参照ください。
自動炊飯中は並行してヘキサゴンウッドストーブにエスビットのアルストを組みあわせておかずを作ったり、お湯を沸かしてレトルトを温めたり出来る。アルストの2刀流ですね。
まとめ
T307は世間で言われるほど使い勝手の悪いアルストではない。むしろプレヒートをマスターすれば小型軽量で小規模使用に特化した、優れたアルストである。
またこのアルストでメスティンでの自動炊飯が可能であることから、T307の他に自動炊飯だけの為にわざわざ固形燃料を持ち歩くことも必要ない。一人用途であれば炊飯も湯沸かしも普段はこれ一つで事足りる。また、長時間の煮炊きや焼き物の場合はエスビットやトランギアのアルストを使うなど、併用することで更にデイキャンプの楽しさが増すに違いない。
ヘキサゴンウッドストーブを持っている方もそうでない方も、あなたのアウトドアツールに是非、T307を加えてみませんか?ねこきんぐでした。楽天経済圏の方はこちらからどうぞ。
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